経済学部・大学院経済学研究科

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ケニアで水道事業に取り組む栫井さんからの報告

 はじめまして!滋賀大学4年の栫井啓太郎と、早稲田大学5年の筒井智之と申します。8月から水道普及のためにケニアに来ました。現在、ケニアの民間水事業会社でインターンシップをして、日々、水という資源の大事さを感じながら生活しています。(2015.11)

インターンシップのきっかけ

 小学2年生から大学3年生までサッカー一筋だった私(栫井)が、将来の進路に悩みを抱いていたとき、あるドキュメンタリー番組を目にしました。その内容は、某日系企業が途上国で水の浄化剤を販売し、人々の生活を劇的に変化させたというものでした。
 水資源に恵まれ、水道普及率も98.5%である日本でこれまで生活してきた私にとって、世界中に水に問題を抱えている人々が数多く存在しているという事実はかなり衝撃であり、生命の源である水のありがたみを改めて実感しました。「将来は水を介して人々に貢献するような仕事がしたい」とその時強く思ったのを覚えています。
 そんな時、大学の教授から世界水フォーラムに参加しないかという誘いを受けました。ちょうど4年に1回のペースで開催されている「世界水フォーラム」が韓国で開催されるということで、教授に同行してフォーラムに参加する機会を偶然頂きました。フォーラムではアフリカの水問題についてのセッションをメインに参加してきました。先進国や世界銀行からの出資によって水道普及率を何パーセント増加させたといったような自分にとってはスケールの大きすぎる話題が多く、正直あまり実感が沸かなかった一方で、現地の様子を実際に見てみたいという思いが強くなりました。
イメージ  アフリカの水問題を自分の目で見て確かめてみたい、ビジネスを通じて持続可能な発展に貢献したいという思いで、インターンシップ先を探していたところ、某海外インターンシップエージェントの方にケニアで水事業を行う現地の民間企業があると、自分の理想にばっちり当てはまった会社を紹介していただきました。
 「ここで行かなければ一生行くチャンスはない!」という思いに突き動かされ、反対する親も何とか説得し、偶然に偶然が重なりながら何か不思議な力に引き寄せられるようにしてここケニアにやってきました。

ケニアでの衝撃

イメージ  私たちが到着した場所はケニアの第三都市と言われるキスムの農村部、コランドという地域でした。キスムにはルオ族という民族が多く住んでおり、実はアメリカ大統領の「バラク オバマ」の父親がルオ族の出身です。ここは東西に伸びるキスムブシアロードを境にして北部と南部に分けることができます。
 しかし、ただ単に北部と南部に分かれているだけではありません。北部には政府が作った水道管がキスムブシアロードを沿うようにして通り、水道のある家庭も存在するのですが、南部にはなんと水道管自体がありません。
 そのため、彼らは北部の水道のある家まで水を買いに行ったり、南部の奥に住んでいる人たちは北部まで水を買いにいくことが難しいため、近くの川や雨水を、飲み水や生活用水に利用しています。もしくは、水を運んでくる商人から水道の値段の約20倍で水を購入しています。

「水道を引く為にケニアに来たが、自分たちの家にも水道がなかった・・・」
  20Lタンクを担いで往復の毎日。
イメージ  私たちが暮らす場所は、コランド南部の水道のない家です。水がなければ料理ができないのはもちろんの事、洗濯や皿洗いもできず、体を洗うことすらできません。幸いなことに私たちは北側の地域に片道5分ほどでアクセスできるのですが、それでも20Lのタンクを担いで歩くのは、男の私たちにとっても重労働です。このタンクを頭に載せ、私たちよりも長い距離を毎日何往復もする女性達の苦労は計り知れません。必ず水道がない人たちに水道を届けたいと強く想うようになりました。
現地での調査
 私たちは実際に濁った川の水を使っている人たちを目の当たりにし、改めて衝撃を受けました。濁った川の水や雨水を、飲み水や生活用水に利用している人が実際にいたということにです。

イメージ  村の診療所でも聞き込み調査をしました。Sarah(サラ)医師によると、この診療所において、患者が訪れる一番の原因はマラリア。次いで多かったのが、なんと水由来の感染症に起因する下痢の症状だったのです。この村では、コレラや腸チフス、胃腸炎やアメーバ症といったいくつもの水由来の感染症が蔓延していました。月平均およそ50人もの患者さんが、下痢の症状を訴えて診療所を訪れていたのです。水道の普及によって病気に苦しむ人々を救うことが出来るという思いが、理想から確信に変わりました。
イメージ  コランドの地域でインタビューを行った40世帯すべての人々が「家庭に水道が欲しいですか?」という質問に対して、「はい!今すぐにでも!」と口を揃えて答えてくださいました。また、一人の女性が「自分の家に水道が来て、時間とお金を節約できるようになったら、小さな売店を始めたい」と言っていたのが印象的でした。水道の普及によって教育やビジネス、彼らの自由に使える時間を創出することができるのです。

水道の普及ためのプロジェクト

ウォーターキオスクの設置
イメージ  コランドの北側には政府が作った水道管が存在します。しかし、南側には水道管が存在せず、物理的に水道を引けない環境なのです。
 そこで私たちのプロジェクトでは北部にある水道管から南部に新しい水道管をひきこみ、だれでも簡単に安く水が手に入るウォーターキオスクを設置します。 ウォーターキオスクとは安全な水を量り売りする施設のことです。 このプロジェクトによって南部の人たちが、安全な水にアクセスできる環境作りが進み、水を運ぶための時間の節約にもなります。
将来的には、新しく引いた水道管をひき、持続的な水道を普及を
イメージ  そして将来的には、新しく引いた水道管から各家庭もしくはグループに水道を引く予定です。現在人々は5KSh(ケニアシリング)/20Lで安全な水を購入していますが、もし水道を引けるようになれば1KSh/20Lしかかからない。つまり、20Lあたり4KShの節約につながります。
 このプロジェクトが成功すれば、南部に住む人たちが安全な水にアクセスできる環境を整えることができます。そして、物理的に水道を家庭に引ける環境を提供できます。このウォーターキオスクは私たちの会社が水を販売した利益をもとに維持管理をしていき、持続的に水道を普及させていくことができます。
メッセージ
 私たちは、今までこの国の発展途上の状態を知りませんでした。彼らは日々、病気になる可能性のある水をの飲むという不安定な環境でくらしています。しかし水道、ウォーターキオスクを設置することで、かれらの暮らしに安定と時間と経済的な余裕が生まれます。その時間が、かれらの暮らしをより安全で豊かなものとしてくれることは間違いがありません。是非皆様のご支援をお願い致します。

栫井さんの活動Webページ

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